もともとそこにいなかった生き物が、他の場所から持ちこまれすみついたものを外来生物(外来種・国内移入種)と言います。ペット、緑化や園芸、養殖、害虫駆除などの目的で、人の手によって持ち込まれた生き物が、野外にはなされたり、人の手で植えられたり、勝手に逃げ出したりするといったことが原因で外来生物となります。
鹿児島市内においては、生態系被害防止外来種リスト(以下、外来種リストと言います)にのっている種の中から、動物では24種、植物では64種、合計88種が確認されています。
鹿児島市は鹿児島県の物流の中心で、国際的な取引をしている港もあるため、国内外からさまざまな物資が集まるほか、人口も多く、ペットショップなども多くあることなどから外来生物が入り込みやすい環境になっています。
ア.ほ乳類
特定外来生物であるフイリマングースが平成21年に喜入地区で確認され、本土で初めて発見・捕獲されました。生態系への被害を防ぐために駆除が行われて、100 匹以上を捕まえました。
このほか、世界中にいる外来種であるクマネズミ、ドブネズミが広く市街地にすみついていると推測されます。

フイリマングース
アライグマによる被害
アライグマは、外国からペットなどとして持ち込まれたものが逃げたり、飼い主が飼育できなくなって野外に放したものが野生化したと考えられています。
他の生き物を食べることで生態系がこわされたり畑などに侵入して農作物が食べられる農業被害、住居に侵入するなどの生活被害が発生しています。
また、かわいらしい外見とは違ってどうもうであり、平成23 年度には犬と散歩していた女性をおそうなどの被害が発生しました。

現在、アライグマは飼育したり、もらったりすることが禁止された特定外来生物に指定されています。九州北部ではほぼ定着しており、近年九州南部に侵入しています。鹿児島県内では姶良市、霧島市、垂水市、指宿市、阿久根市で確認されています。
イ.鳥類
ドバトは、ヨーロッパをはじめとするユーラシアに生息するカワラバトが、伝書鳩やレース用として日本に持ち込まれたもので、飼育していたものが逃げ出して野生化した「カゴ抜け」とよばれる外来種です。
市街地に広くすんでおり、公園などでは、人のエサやりで定着し、フンの問題もあります。

ドバト
ウ.は虫類・両生類
特定外来生物であるウシガエルが永田川で確認されています。
は虫類では、外来種リストにのっている種として、お祭りなどの夜店やペットショップでミドリガメとして販売されているミシシッピアカミミガメが甲突川で確認されています。

ウシガエル
キノボリトカゲ、すぐ近くまで
キノボリトカゲ類は日本では奄美より南の地域で自然分布するトカゲの一種です。
奄美にはオキナワキノボリトカゲが生息しています。
そこではマングースやノネコなどに食べられたり、ペット用として人に捕まえられたりするため生存がおびやかされており、絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
しかし、宮崎県日南市では南方の島からのチップ用材にまぎれていたものか、飼育されていたものが野外に放たれ、鹿児島県指宿市では観葉植物の持ち込みの際にまぎれ込んでしまい、すでに定着しており、今後も分布の拡大が心配されています。
自然分布地では希少種であるものも、他の地域に持ち込まれると国内移入種となってしまい、その地域の生態系に影響を与えることとなります。

オキナワキノボリトカゲ
エ.昆虫類・多足類・クモ類
特定外来生物であるクモ類のセアカゴケグモとハイイロゴケグモが確認されています。外来種リストにのっている種として、昆虫類のオオヒラタクワガタ、キバナガノコギリクワガタが確認されています。
このほか、沖縄や奄美から分布を広げている、ヤンバルトサカヤスデが鹿児島市内でも発生しており、害虫問題を引き起こしています。

ハイイロゴケグモ
オ.魚類
特定外来生物であるオオクチバス(ブラックバス)、カダヤシとブルーギルが確認されています。オオクチバスは松元ダムで、カダヤシは甲突川、永田川などで、ブルーギルは永田川と松元ダムで確認されています。
その他、グッピー、ニジマスなど多くの外来種が甲突川や永田川で確認されています。

オオクチバス(ブラックバス)
カ.貝類
特定外来生物は確認されていません。外来種リストにのっている種として、ジャンボタニシとも呼ばれるスクミリンゴガイが吉野地区(本名川など)の川や、市内各地の田んぼなどで確認されています。この貝は、田んぼに植えられた若いイネを食べてしまうため問題になっています。

スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)
キ.甲殻類
ク.植物(維管束植物)
特定外来生物として、水草のオオフサモ、浮草のボタンウキクサ、陸上に育つオオキンケイギク、ナルトサワギク、アレチウリの合計5種が確認されています。
これらのほか、外来種リストにのっている種としてアメリカセンダングサ、オオカナダモなど59種が確認されています。

ボタンウキクサ
特定外来生物オオキンケイギク
オオキンケイギクは外来植物で、鹿児島では6月頃を中心に黄色いコスモスのような花を咲かせます。
この植物は花がきれいで育てやすいため、観賞用や緑化用として国内に持ち込まれ、道路ぞいの緑化にも使用されていました。
鹿児島市でも、日当たりのよい道路ぞいや川の土手など市内全域に分布しています。1年では枯れない多年草であり、いったん定着してしまうと、もともとあった野草の生育場所をうばってしまうことが問題になっています

オオキンケイギク
現在は、特定外来生物に指定され、野外に植えることや種子をまくこと、家庭で栽培することが禁止されています。
外来種の拡大防止という点で、この花を自然界に放置したり、育てたりすることには問題があると言えます。
近年、市民と一緒になってオオキンケイギクの駆除活動を実施している自治体もみられます。
一度定着してしまったオオキンケイギクを駆除するためには、このような地道な活動を継続して行う必要があります。
また、特定外来生物の正しい知識も必要です。駆除活動の情報を見つけたら、積極的に参加してみましょう。
外来生物をそのままにしておくと、元々そこに住んでいた生きものが食べられて生態系が崩れたり、農作物が食べられる農業被害が出るなど私たち人間の生活にも影響があります。