鹿児島市の天然記念物・記念物に指定されている植物について調べてみよう。
1 国指定
ア. 喜入のリュウキュウコウガイ産地(特別天然記念物)
鹿児島市の南部、喜入の生見海岸には、リュウキュウコウガイ(メヒルギ)の群落が見られます。
この植物は、「マングローブ」を形成する植物の一種で、琉球(沖縄)のこうがい(かんざし)に似ているのでこの名前がついています。
かごしま自然百選:喜入生見のメヒルギ産地とハマボウの群生地
イ. 城山
鹿児島市の中心部にある城山には、クスノキ、スダジイの大木を中心にバリバリノキ、バクチノキ、オガタマノキ、タブノキ、コクモウクジャクなど約500種ほどの植物が生育しています。
この中のシロヤマシダ、シロヤマゼンマイ、サツマイナモリなどは、日本では城山で初めて発見されました。代表的な南九州の照葉樹林が自然のままの姿で残っていることが貴重であり、植物の宝庫とも呼ばれています。
かごしま自然百選:城山と城山自然遊歩道
ウ. キイレツチトリモチ産地
キイレツチトリモチは高さ3〜10cmほどの黄色の小さい植物で、トベラ、ネズミモチなどの根元に寄生するめずらしい植物です。
日本では、吉野町で多数発見されたことから、自生地としてこの場所が国指定の特別天然記念物に指定されています。キイレツチトリモチは、明治43(1910)年に喜入町で初めて発見されたので、このように名付けられました。
2 県指定
ア. ソテツ(世界で初めて裸子植物の精子が発見された)
明治29年に、世界で初めてソテツの精子が発見されたことを東京帝大(現在の東京大学)の池野成一郎博士が発表しました。
その材料となったのが、県立博物館の旧考古資料館前庭にある高さ5.9m、樹齢約400年と推定される雌雄のソテツ群で、この雌株についた胚珠(はいしゅ)の中から精子が発見されました。 この発見は、世界の学術上重要な成果となりました。
イ. 特殊羊歯(しだ)類及び蘚(せん)類の自生地
東桜島町の火山活動でできた風穴のなかで、1年中、平均15℃ほどの湿度の高い風が吹き出しているところがあり、その周辺にはオオヤグルマシダやヘビゴケなどのシダ類やコケ類がかつてびっしりと育っていました。
これらの植物が狭い範囲に分布していることは、生態分布上重要なものとなっています。
3 市指定
ア. 藤崎家の大楊梅(おおやまもも)
第17代島津義弘は、関ヶ原の戦いのあと、桜島の藤野に移り2か月ほど藤﨑家で生活した際にヤマモモを植えたといわれています。
樹齢は約400年で、樹幹は3mほどの大木です。
イ. キイレツチトリモチの自生地
キイレツチトリモチは、明治43(1910)年に、喜入小学校教員山口静吾がこの地で発見し、牧野富太郎博士により命名された大変めずらしい植物です。
その後吉野町桜谷でも多数自生しているのが見つかり、桜谷は国の天然記念物に指定されました。
かごしま自然百選:キイレツチトリモチ発見の地
ウ. 郡山花尾神社の社叢林(しゃそうりん)
薩摩藩主島津家ゆかりの地として正徳3(1713)年に再建されたといわれる花尾神社の社殿及び社叢はおごそかで、神聖な場所として保護され、当時植えられたと推定される樹木や自然林の一部が現在でも大きな樹木となって生き残っています。
社叢のイチイガシ林には、胸高直径が1mを超えるイチイガシや、多様で特徴的な種の樹木があり、とてもめずらしい森林植物相となっています。
学術上貴重な植物や絶滅しそうな植物は、天然記念物として指定され、人の手が加えられないよう保護されています。