農山村の自然は、私たちの生活とともにどのように変化しているのだろう。
里地・里山の自然は、さまざまな生き物がすむ場所であるとともに、食料生産などの「供給サービス」や、雨水を地下にしみこませて地面を安定させたり(地下水かん養)、こう水調整などの「調整サービス」を提供しています。
また、日本人にとっての原風景である「文化的サービス」も提供しています。
※「供給サービス」、「調整サービス」、「文化的サービス」は、「生態系サービス」と呼ばれる自然のめぐみのひとつです。
1.森林の現状
2010年度(平成22年度)の鹿児島市の森林の面積は 29,786haとなっており、市域の約54%を占めています。2004年度(平成16年度)には約56%でしたが、団地の開発で木が切られているため森林が減り続けています。
鹿児島市内の森林は、すべて二次林とよばれる人の手が入ったもので、人の手が入ってないもの(原生林)はずいぶん昔になくなっています。
森林のうち約51%が天然林で、そのほとんどはシイやカシ類といった常緑広葉樹の照葉樹林です。
残りの約49%が人工林で、そのうち民有林(企業や個人が持っている林)におけるスギ林・ヒノキ林が88%となっています。これらの人工林は、枝打ちや間伐といった適切な管理が行われていないことにより、森林の働き(調整サービス)が低下していることが問題になっています。
鹿児島市域における森林面積割合の推移

出典
・鹿児島市面積:鹿児島市「統計情報『市域の変遷』」
・森林面積:鹿児島市「統計情報『所有形態別林野面積』」
・パーセンテージ:(森林面積÷鹿児島市面積)× 100
鹿児島市内の経営耕地面積の推移

出典:鹿児島市統計書
2.農地の現状
鹿児島市内の農地は、水田2,250ha、畑地4,850haなどが吉田,桜島,喜入,松元及び郡山地域を中心に広がっており、鹿児島市全体の面積に占める農地の割合は約13%です(2012年(平成24年))。
昔に比べると農地の面積は減り続けています。これは、農地が宅地など別のものに変わってきているためです。
農地は、昔は鹿児島市域で大きな面積を占めていました。畦の草地や水路などは農地でしか見られない生態系をつくり、田んぼには湿地としての働きや水源かん養・遊水池としての働きもあり、気候の安定やこう水の調整などに役立っています。
現在は、農業で働く人の高れい化が進み、所有者がいない土地の増加などにより、管理ができていない場所も見られ、やぶになったりすることにより、イノシシなどの獣が田畑に近づきやすくなっています。
また、規格外農作物をその土地内に放置してしまうことで、野生生物のエサになり、農作物の味を覚えたタヌキやイノシシなどに農作物が食べられてしまうといった問題も起こっています。
鳥獣の種類 | 品目 | 被害面積(ha) | 被害金額(千円) |
---|---|---|---|
イノシシ | 水稲、サトイモ、サツマイモ、桜島小みかんなど | 72.50 | 10,175 |
シカ | 水稲など | 6.82 | 715 |
タヌキ | ミカン類、スィートコーン、スイカなど | 6.97 | 961 |
アナグマ | ミカン類、スイカ、スイートコーンなど | 15.02 | 2,315 |
カラス | ビワ、桜島小みかん、スイートコーンなど | 14.93 | 2,295 |
ヒヨドリ | ミカン類、野菜類など | 14.52 | 2,308 |
合計 | 130.76 | 18,769 |
出典:鹿児島市鳥獣被害防止計画(平成30年度作成版)
鹿児島市の森林や農地は、どちらも開発などのために面積が減り続けています。
また、適切な管理が行われないことにより、森林(人工林)では、森林の調整サービスが低下し、農地では、野生生物の被害にあうといった問題も起こっています。
自然を守るだけでなく、適切に管理していくことも重要です。