私たちの暮らしが、生物多様性とどのようにつながっているのか考えてみよう。
1.さまざまなめぐみを受けるものとして
命に大切な水は、森林がかん養した地下水や、それが流れ出た甲突川、稲荷川などの川の水により私たちに届いています。私たちが利用してよごれた水は川の自浄作用やび生物の力を利用した汚水処理などできれいにされています。
また森林や錦江湾の植物プランクトンをはじめ、私たちの身の回りにいる植物によって酸素が作られます。森林や水田などは、こう水から人間を守ってくれる役割もあります。
食べ物やエネルギー、さまざまな製品の原料など、人間の生活に必要なものを与えてくれます。
2.おそれあがめる対象として
自然はさまざまなめぐみを与えてくれます。しかし、台風やこう水、地しんによる大きな災害で私たちの暮らしに影響を与えるなど、私たちは自然のおそろしさを感じながら暮らしています。
そのため、田の神や地鎮祭など、自然に対しておそれあがめる習わしがあります。
3.自然ふれあいの対象として
花や小鳥の鳴き声、田園風景など、自然の姿そのものが私たちの心に安らぎを与えてくれます。
また、ハイキング、バードウォッチング、家庭菜園、つりなど、さまざまな自然や生きものがレクリエーションの対象となっています。
4.伝統・文化・教育の場として
春になると山や里ではワラビやタケノコなどの山菜がとれます。サルトリイバラ(カカラ)の葉を利用した「かからんだんご」や、竹の皮を利用した「あくまき」などの保存食も、自然の力をかりて作る伝統的な食べ物です。同じように、焼酎やみそ・しょう油などのび生物をつかった食品づくりも伝統の中で大切に育てられてきました。
また、七草がゆ、十五夜などの行事が行われるなど、季節と関係した文化も生まれています。
里地や里山は、私たちにとって遊びや文化を伝えるとともに、自然とのつきあい方や生命のすばらしさを学ぶ場にもなります。
5.資源・作物を育てる場として
私たちが生きていくために必要な食べ物には、農地で作られた肉や野菜、錦江湾からとれる魚などがあります。また、家などを作る木材や工芸品などを作る竹材なども、里山などから作られています。
桜島大根や桜島小みかんなどの特産の農産物、さつま大長レイシなどの地域特有の伝統野菜などもあります。
6.他の地域とのつながりとして
令和2年度の鹿児島県の食糧自給率(カロリーベース)は、77%で、全国の37%と比べて高く、私たちが食べる多くのものが鹿児島で作られていますが、他の県や外国などで作られたものにも頼っています。
生活に必要な食べものの他に、家ちくのエサとなるこく物やエネルギーなども他の地域の資源に頼っており、日本だけでなく、世界のいろいろな生きもののおかげで私たちは生活できています。
私たちの暮らしは、生物多様性から作られる自然のめぐみによって支えられています。